オルセー展に行ってきたはなし

今期西洋近代美術という講義を取っていて、文字通り西洋近代の美術を勉強する講義で、これがなかなかおもしろく、期末がレポートではなく試験なのもあって、いろいろ覚えるていどに勉強したし、補講課題のレポートでは19世紀以降の絵を扱う展覧会に行ってこいとのことだったので、国立新美術館で始まったオルセー美術館展に行ってきました。

オルセー美術館は1848-1914年の美術作品を主に展示している美術館で、1860年くらいから盛り上がった印象派の作品がかなりたくさん収蔵されてる。印象派っていうのはそれまでスポットを浴びなかった風景や日常の一瞬に着目した人たちで、瞬間を描いてる感を出すためのササッとした一見未完成っぽいタッチが特徴。
従来のアカデミスム:時間をかけて描く、宗教等永続性をもつモチーフ
印象派:あえて時間をかけず細かくは仕上げない、自然や動きの瞬間の光を表現したい
という対比はなかなか好き。印象派でもスーラの点描画のようにメチャメチャ時間かけてるものもあるけどね。


さてわたくしいままで印象派なんてあんまり興味がなくて展覧会も行かなかったものだから84点という規模や珍しさがいつもよりどうだというのはよくわからなかったけど、講義で代表作として習った作品や美術の教科書で見るような作品がだいぶ多いのに驚いた。あとでオルセー美術館理事長のコメントを読んだら、やっぱり大きな決心をするほどの数と質だったらしい。
目玉はマネの笛を吹く少年とか、ミレーの晩鐘かな。あとは日本初公開のモネ版草上の昼食とか。
個人的に好きだったのはレアリスム画家たちの描く空の色味と、モネのかささぎ、ジュール・ルフェーヴルの真理。これはアカデミスム(筆が細かく理想的)イエーイってかんじの絵だけど、生で見るべきほんとうにものすごい筆致。
あとはウィリアム・ブグローのダンテとウェルギリウスというめちゃめちゃでっかい作品に包茎おちんがわりとドーンと(状態としてはデレンと)描かれていたのにオオーってなった。アカデミスムだ。
印象派の作品ではシスレーのポール・マルリーやモリゾのゆりかご、モネの死の床のカミーユなんかがとてもよかったな。

出展作品は1850〜80年代ごろ、とくに60年代後半〜70年代のものが多い。日常の切り出しや自然・風景の発見、光や瞬間の抽出とアカデミスムから印象派の定着までにはいろんな過程があるけど、実践されたのはほぼ同時代だから、このころの芸術って貧富や是非の差はあれものすごく盛り上がってたんだと思う。

事前に勉強してると、実際に見たときあっこれ講義でやったやつだって興奮するのもあるし、その時代の画家が先代・同時代の画家の作風やその時代の文明の進歩を少しずつ取り入れて自身のスタイルを作っていったんだなっていうのが絵を見てわかるから楽しいね。時代や文脈を知らないとみんな似たようにボサボサと筆を遊ばせてみただけのなんか有名な絵、になってしまう。

で、そんなふうにできあがった作風のちがいは人という同一モチーフを取る肖像画にとりわけよく表れていると思う。構図や場所や服装、線、色味の取り方が画家それぞれでまったく異なるから、描かれた表情やポーズだけじゃなくて画家選びからその人となりがわかるということもあっただろうな、と思いながら見るのも楽しい。


ん?って思ったとことしては笛を吹く少年が「歴史を変えた傑作」なのかな、ということ。マネでそれを言うなら、今回はなかったけどやっぱり官展で大バッシングを受けたという草上の昼食とかじゃないだろうか。まあ来てたマネ作品のなかで目玉を選ぶならあれなのかな〜とは思った。
あとスタッフの対応がハイパー杜撰。なのと、新美の性格なのか、でかい声でしゃべりながら、とか、カップルで手をつなぎながら、観覧してる人がだいぶいた。


全体はほんとによかったです。
ポストカードはかささぎと、バジールのアトリエと、シャルル・ジャックの羊くんを買いました。真理があれば欲しかったけどわたしの本命はいつも商品化されてない。
9月2日大学生は無料で入れるみたいなので気になる人はぜひ行くべきです。

しかし絵画をレポートにするってスゴク難しい。まあ文学もそうなんだけど、絵なんて文学よりもだいたいの価値言われちゃってるし、見たほうが早いし、深読みすればおもしろくなるとも限らなし。
うーん。